「女子と本気勝負!」
Text by 薮平
テニス3

プロ選手の活躍を見ていても、少なくとも日本においては、テニスというのは
女性上位のスポーツのような気がします。そういえば、僕らが学生の時にも
男子で運動神経の良い奴は野球やサッカーをやるのに対し、女子ではテニス部が
人気クラブで、結構運動の得意な子が入っていたと思います。もともとアマチュア
のレベルでは、筋力やスピードより、確実さや忍耐が勝敗の鍵だったりするので、
女子が男子に勝ってしまう確率の高いスポーツであるといえます。また、個人競技
ということもあって、割と頻繁に男子対女子のシチュエーションにお目にかかれ
ます。

そういう訳で、古今東西の「女子との本気勝負」シチュエーションを追い求めて
きた私としては、テニスというのは特別思い入れのあるスポーツで、これまで
紹介した以外にも、自分が体験した、もしくは目の当たりにしたエピソードが
いくつかあります。前に書いたように、同好会レベルとはいえ、自分が一応
プレーヤーであるので、強い女子選手との遭遇のチャンスに恵まれたことも
ありますが。

社会人になり何年かたった頃、私はテニスコートを見つけるたびに、強い女子選手
はいないかなと見ながら通る習慣ができていました。そんな中で、あるテニス
スクールの前を通った際に、一目で強そうとわかる女子コーチを見つけました。
長身で浅黒く引き締まった手足の筋肉から、(この頃には強い女性、本物のアス
リートを瞬時に見分ける眼を身につけてましたので)遠めから見ても、「これは
本物に違いない」と感じられました。早速お近づきになりたいと思いましたが、
それはなかなか難しいことでした。テニススクールのコーチというのは、アルバイト
的な勤務時間のようで、いつでもいるという訳ではありません。せっかく出かけ
ていっても男子コーチしかいないということもありました。らちがあかないので、
そのスクールの生徒になることにしました。私は上級者とは言えませんが一応
7、8年、部活、同好会でテニスをやってきたので、いくらなんでもスクールで
初心者に混じっては面白くないかと思いましたが、その女子コーチの担当している
中級コースがあったので、それに入りました。その女子コーチは名前をFさんと
言いました。

Fさんの授業は楽しいものでした。明るくはつらつとした声で、ボール出し、
アドバイスをしてくれます。
「藪平さ〜ん。もっと早くラケットを引かないと振り遅れますよ〜。」
自分より実力が上の女子に教えられるという状況にゾクゾクしたりしました。
スクールの授業では、Fさんはやさしい打ちやすいボールを打ってくれます。
しかしそんな中でも、そのレベルの高さはわかりました。スクール生が打つ
とんでもないアウトボールをひょいと簡単に返してしまいます。私が打ち込んだ
スマッシュも軽く返されてしまいました。私は本気で戦ったとしても軽く打ち
負かされてしまうであろう女子選手を、またまた見つけることができ、有頂天に
なりました。[Fさんと対戦してみたい。]

スクールの授業が終わった後に、話しかけたりしました。大学を出たばかりで、
思っていたとおり、大学時代は某大学の体育会で活躍したようです。コートで見る
とその存在感からか、かなり大きいように見えましたが、身長は170弱位。
Tシャツと短パンから露出した健康的な筋肉が眩しく思えました。

何回か通ううちに、かなり仲良くなることができました。スクールの授業の後で、
コーチとスクール生数名でお茶するようなこともよくありました。私ははやる心
をおさえながらも「こんど休みの日とかに二人でテニスしませんか」などと
誘ってみました。しかし残念ながら、ガードが固く、実現しませんでした。忙しい
云々の理由で、はぐらかされました。誘っている状況は、私の真意とは違って
男女交際を申し込んでいるように見えるでしょうから、その気がなければ、
なかなかOKしてもらえなくても不思議ではありません。私としては、とにかく
一度対戦したい、という思いだけでしたが。

スクールへ通いはじめて半年くらい経った頃、あきらめずに通い続けた甲斐が
あって、思いもかけず、Fさんから声をかけられました。連休に友人同士で
別荘地へテニス旅行へ行くのだが、男のメンバーが急に駄目になり、誰か行か
ないかというものでした。私は、他の用事を顧みず進んでOKしました。
[もしかしたらFさんと対戦するチャンスがあるかもしれない。]

旅行は昼間テニスをして、夜はコテージに泊まるというものでした。他のメンバー
はFさんの体育会時代の友人らしき女の子Oさんと、体育会時代の先輩という色の
黒い男H君でした。聞けば私を除いて3名とも体育会テニス部出身、しかも相当な
実力者のようで、車の中では、いつかの大会では優勝したとか、惜しかったとか、
そんな話で盛り上がっていました。うーむ、私を除いて3名ともが体育会女子で
あれば、3人によってたかっていじめられたりして、なんて妄想したりしました。
いくら人数足りなくても女性ばかりであれば、私が誘われる訳がないのですが...。

さて昼前に目的地に着いて、早速テニスコートでテニスとなりました。
女子の2人は、上は白のテニスシャツですが、下は紺色のウォームアップ用の
ジャージ(ウィンドブレーカーのような生地のもの)を着ていました。Fさんの
スコート姿を楽しみにしていた私は、ちょっとがっかりしましたが、それよりも、
女子との本気対決の予感に夢中になっていました。

Fさんのプレーは、コーチとしてのやさしいプレーしか見たことありません
でしたが、やはり、ストローク、サーブ、ボレー、スマッシュとも豪快なもので、
わくわくしました。またその友人のOさんも見た目はちょっとぽっちゃりした感じ
で、鋭い感じはしないんですが、聞けば、Oさんもスクールのコーチをしていると
のこと。私と打ち合う時には笑顔で手加減してくれているようですが、それでも
早くて重いストロークで、軽く打ち負かされてしまいました。

さて、ダブルスで試合をしようということになりました。まずはミックスダブルス
で、まずFさんと組み、第二試合はOさんと組みました。
4人の中で私だけが同好会レベルだったので、足を引っ張る形でした。私がミスを
してポイントを取られ、ペアの女性にカバー、挽回してもらったりと、情けない
状況でした。どちらの試合も、私のせいで負けてしまったので、ペアの女性達に
悪いとは思いましたが、本気試合というよりは男女交際的なムードで、皆楽しく
やっているように見えました。

さて、次の試合は、4人の中での最後の組み合わせ、男子ダブルス対女子ダブルス
となりました。シングルス対決でないのが残念ですが、男子対女子の本気勝負が
できる訳で、胸が高鳴りました。私だけでなく、他の3人もやる気になっているの
がわかりました。
H君「女子に負ける訳にはいかないからな。本気出していくぞ〜」
Fさん、Oさん「よーし。こっちも本気よ〜」

試合が始まりました。H君はさすが体育会男子という形で、サーブやストローク
は豪快なものでした。H君のプレーでは結構ポイントを取ってくれました。しかし
私をカバーして良く動き回ってくれるのですが、女子ペアの鋭いショットが私を
襲い、ポイントを失ってしまいます。H君の奮闘もむなしく、結局完全に私が足を
引っ張る形で、6−4で負けてしまいました。

私は、自分ばかりがミスをして悪いという気持ちと、女子に集中攻撃され、
いたぶられた快感が複雑にいりまじり、うつむいていました。そんな中で、H君が
一番悔しがっていました。下手くそな私と組んだとはいえ、男子対女子で、しかも
後輩女子に敗れた訳です。彼の体育会系人生においては、まったく我慢できない
屈辱だったのでしょう。H君の顔からは笑顔が消えていました。

H君「くっそ〜。もう一回やってくれ。今度は勝つから。今のは調子が出なかった
だけだ。」
Fさん、Oさん「え〜?何度やっても私たちが勝つわよ。」
女子チームには勝利者の余裕があります。ここぞとばかりに、先輩をいじめに
かかります。
Fさん、Oさん「それじゃぁ、晩ごはんの準備でも賭けてやる?後悔するん
じゃない?」

女子チームの提案をしぶしぶ受け入れました。食事の準備という屈辱的な罰ゲーム
が加わり、我々男子チームはますます負けられない状況に追い込まれました。

はじめて白熱した試合となったこともあり、皆ジャージを脱ぎ始めました。女子二人
はおそろいの紺色のスコート姿となり、私は思わず見とれてしまいました。おそろい
というところが、体育会の「本物の強さ」のようなものが感じられ、私はますます
プレーが萎縮してしまいそうでした。また女子チームは、二人で何か話していました。
それは作戦を話し合っているようであり、ますます「本気の女子に襲われる予感」
に戦慄しました。

リターンマッチがはじまりました。女子チームは、前の試合にもましてダイナミック
なショットを打ち込んできました。スコートを振り乱した豪快かつ正確なショット
が私を襲います。女子の作戦が私への集中攻撃であることは明らかでした。これを
やられたらひとたまりもありません。私はぶざまに振り回され、ショットを返せず、
ポイントを失っていきました。情けない話ですが、私はそのころ、テニススクールで
しか運動をやってなかったので、体力的にも消耗し、足がつってしまいました。
しかし、屈辱的な賭けをしていることもあり、途中でギブアップすることはできません。

足がつって動けなくなった私を確認すると、女子チームは余裕の笑みを見せるよう
になりました。そして、そこからH君狙いに作戦変更です。私は立ってるだけという
状態になってますので、その後の試合は、完全に2対1のようになってしまいました。
H君は実力者であり、私をカバーしてがんばってくれていたのですが、逆にそれが
アダとなり、体力的にもきつくなっていました。女子二人がテニスコーチを職業に
しているのに対し、H君は卒業後は普通のサラリーマンです。実は体力的には男子の
優位さがなかったのです。その上、2対1になってしまってはたまりません。
女子チームはダブルスコートいっぱいにH君を振り回して、最後には甘くなった球を
確実にスマッシュやボレーで決めていきました。H君も、もちろん私も、このままでは
マズイ、なんとかしよう、がんばろうと声を掛け合いますが、ポイントが返せません。
「まず弱いほうを徹底的に狙い、完全に優位になったところで、強いほうを料理しに
かかる」という、後から思えば女子チームの戦略にまんまとはまってしまいました。

振り回されてボールを追いかけているH君の顔は、もはや泣いているように見え
ました。動けなくなった私というハンデを背負ったとはいえ、体育会出身の男が、
女子テニスに手も足も出ず、負かされていくのです。女子に負かされるのはH君の
人生では始めてだったのかもしれません。そのせいもあって一層パニックに陥っている
ように見えました。頭の中では、どんな思いがよぎったことでしょうか。
[ああ。後輩の女子になぶりものにされて、また負けてしまう。体育会出身の俺が。
信じられない。しかも、ここで負けては、食事の準備という屈辱的な罰ゲームが。
女子に負かされて、食事を作らされるなんて...。
もう勝ち目はない。逃げ出したい。だが、もうどうしようもない...。]

女子チームのショットはますます勢いを増したように思えます。まさにとどめを
さしにきた感じです。0さんがダイナミックなバックハンドを打つたびにそのグラマー
な胸がぶるんと揺れます。またFさんのスコートをひらりと翻したスマッシュが
炸裂します。私は女子に犯されていく被虐間の絶頂を感じていました。かわいそうな
H君はどう感じていたでしょうか。H君は、振り回されてふらふらしながら、それでも
必死にボールを返します。ボールを返す時の「だぁっ」とか「ぶぁっ」という声が、
悲鳴もしくは泣き声のように聞こえます。

ついに1ゲームも取れないまま、マッチポイントとなりました。女子チームは、ニヤニヤ
と意地悪な笑みを見せ、「なあんだ。歯応えがないなあ。もう終わっちゃうの?」
「女子には負けないんじゃなかったの?2試合連続で負けちゃうわよ。それどころか
こんどはダンゴ(ストレート)じゃない。女子にダンゴ負けなんてね〜。
もう強がりは言わないの〜?」
などと軽口をたたいて挑発します。しかし、我々には言い返すカラ元気もありません
でした。そしてプレーが再開し、女子チームの正確なストロークが男子側のコートを襲い、
ついにはスパーンときれいな音を残して、コートぎりぎりに強烈なショットが打ち込まれ
ました。H君は飛びつこうとしましたが、取れず、コートに倒れこんでしまいました。
私もがっくりとひざをつきました。

ゲームが終わりました。6−0。
なんと、1ゲームも取れず、完膚なきまでに叩きのめされてしまいました。
満面の笑みの女子チームとは対照的に、肉体的、精神的にもボロボロにされた男子
チームは声も出ませんでした。

Fさん、Oさん「まあ本気出したらこんなものよ。」
H君、薮平「...」
Fさん、Oさん「もう一試合やってあげても良いよ。こんどは何を賭ける?」
H君、薮平「きょ、今日はもうやめておこう...。」

その夜我々男子チームは、、約束どおり、リビングから漏れてくる女子二人の
笑い声をうらめしく聞きながら、屈辱で声も出ないまま、食事を作りました。

そして食事の最中も、その後も、H君と私は、女子二人から挑発され続けました。

Fさん、Oさん「明日も、もちろんやるでしょ?男子対女子。逃げたりしないよね?
つまんないから、ハンデあげても良いよ〜。きゃはは〜。
そのかわり、罰ゲームも重くしなきゃね。逆立ちでコート一周?
そうだ、スコートはかせてテニスさせるってのは?
ははは〜。けっさく。それでいこう。」



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