僕の原体験
Text by mampepper


 先日、早めの夏休みをとって45日帰省していた時、実家の押し入れの中にしまっていた
荷物を整理する機会がありました。その中に、もう十数年前になりますが、私が中学生だった
頃出場した、ある柔道の大会の模様を写したビデオテープがありました。
当時、父兄のひとりが会場でビデオ撮りして、記念にとダビングしてくれたものです。
実家を離れて以来、どこに行ってしまったのか行方不明になってしまい、
随分長いこと、その所在が気にかかっていたのです…というのも、ここには、私の
<girl beats boy 原体験>ともいうべき、ある試合が完全収録されていたからです。
約10年ぶりに見直すことができた、その試合の模様を、ここに忠実に採録してみたいと
思います。個人的な思い出の話で恐縮ですが、ここには私と同好の方々が大勢、おられる
ようですので…。

それは、当時私が住んでいたある市で行われた、中学生の柔道の市内大会でした。
とても暑い日だったという記憶があります。私は当時、2年生でしたが、
レギュラーとして団体戦の次峰をつとめていました。
問題の試合は、1回戦で起りました。
私の学校は、既に先鋒、次峰(つまり私)と一本勝ちして、続く中堅戦をとれば、
団体の勝ちが確定する、というシチュエーションでした。相手の学校は中堅と副将に
女子選手を配していました。この当時、レギュラーに女子を2人も置いているというのは
(たぶん今でもそうでしょうが)完全な弱小校という意味でもありました。私の学校にも
女子部員は結構いましたが、レギュラー枠には入っていなかったのです。
私たちの間には、楽勝ムードが漂っていました。

選手が会場に呼ばれ、中堅戦が始まります。私の学校の選手は、Sという160センチくらいの
同級生でした。私の学校は柔道部でも、いわゆる坊主頭ではありませんでした。
相手は、長い髪をポニーテールにした、ボーイッシュな少女でした。
結構上背があり、体型はややずんぐりしていますが、黒帯をしめており、女の子なりに
よく練習している感じがします。
主審が「はじめ!」の合図をかけました。少女のかわいらしい気合いが響きます。
Sはそれに自分も気合いをかけて答え、しばらく組手争い。Sは積極的に手を出しますが、
少女もなかなかいいところを持たせません。Sは相手の襟を持って内股の体勢、しかし
これは少女が防ぎ、そのまま勢いで場外。主審から「待て」がかかり、2人とも開始線へ。
試合再開。少女は組みぎわに背負い投げを狙いますが、これはSが上にのしかかって
潰し、絞めを狙います。少女はこれをカメの体勢になって防ぎ、動きが膠着したところで
再び「待て」。「あとふたつ半!」というかけ声が、少女側のギャラリーからかかります。
30秒経過、ということでしょうか。
主審が乱れた柔道衣を直すよう指示します。少女の方は少し疲れが出たか、ふーっと大きく
息をします。
試合再開。S、少女ともに背負い投げや内股を狙いますが、浅くて決め手にはならず。
中盤は動きもあまりありませんでしたが、何度かの組みあいの後、Sの小内刈りが少女の
足元をとらえ、少女は横倒しに。私たちは思わず「よっしゃ――!」と歓声を上げます。
主審は「有効」を宣告。ポイントを先取したSはそのまま押さえ込もうと、寝技に
持ち込みます。しかし少女も両足をSの足にしっかりからめて必死に防ぎ、再び「待て」。
私たちは「いける!いける!」と押せ押せムードです。
再開直後、Sは少女の右袖をとり一本背負い。少女の両足が畳から浮き上がり、私たちからは
一瞬「やった――!」と歓声。
しかしこの技はちょっと強引すぎました。少女は体重を横に移動させ、Sの背負い投げを
潰すと、すかさず取られた右腕でSの襟をとり、さらに腰をSの首に押し付けながら、
完璧な送り襟絞めに極めたのです。ちょうど横から絞めに入られた形のSは、
顔を真っ赤にして白い歯をくいしばりながら耐えます。左手で必死に自分の襟をとり、絞めを
防ごうとしますが、襟はもう完全に首もとに食い込んでいます。
「絞めろ、ガッチリ絞めろ!」
おそらく監督の先生でしょう、野太い声援が響きます。
「絞まってる、絞まってるよ!」
こちらは副将の女の子の声(だと思います)。
「足とれ、足!」
という監督の声に従って、少女は空いている左手でSの足を抱え込みました。
少女はこの体勢のまま、自分の腰を軸にして回転します。1回転半…Sは必死に場外に
逃げようと足を伸ばしますが、これに気付いた少女は自分の腰を浮かせると、Sのからだを
試合場の中央に引き戻し、なおも絞めあげて1回転。Sは眉間にしわを寄せて苦悶の表情。
「S――!あとひとつ!」
これは私の声でした。あと1分だから頑張れ、という声援です。
しかし、それとほぼ同時に、Sはまるで許しを乞うように、右手で少女の腰を
ポンポンと5回ほどたたいて、ついに「まいった」の合図。
ところが、これは主審から死角になっていたため、試合はすぐにはストップしませんでした。
少女が更に回転を加えて絞めあげると、Sの全身から力がぬけ、うつぶせのまま動かなくなりました。
「おーっと、落ちたっ!」
私たちの監督先生が叫んだところで、主審が初めて手をあげ、「一本」を宣告。
絞めていた時間は、ビデオで確認するとわずか10秒ほどの逆転劇でした。
ゆっくりと立ち上がった少女は、はじめこの結末にとまどっているようでしたが、
チームメイトの方を向いて、控えめに、しかし笑顔を見せてガッツポーズ。
うつぶせのまま、ちょうど少女にひれ伏すような形で失神したS。
大の字のままピクリとも動かず、両方の手がまるで虚空を握るように丸くなっています。
「気ィ失ってるぞ、オイ」「落ちちゃったの?」「怖いねえ…」
観戦していた部員や父兄のざわつきが聞こえます。
主審がSの背中に両手をあてて活を入れましたが、完全に落ちたSは全然動きません。
2度、3度とやってもSがピクリとも動かないので、今度はかわりに副審がSの両脇に
手を入れ、上半身を抱き起こすようにして活を入れました。Sは口を半開きにして、
むしろ気持ちよさそうでしたが、これでようやく意識を回復しました。
(この間、ビデオはSのアップになっているので、少女のリアクションはわかりません)
やっと立ち上がり、まだ足元のふらつくSの帯を副審が握って、開始線に戻らせます。
Sと少女が開始線で向かい合い、主審が改めて「一本勝ち!」と少女の勝利を宣告して
試合終了。チームメイトの方を振り返った少女は、再び笑顔を見せてガッツポーズ。
Sはうなだれて控えに下がります。

この後、副将・大将がともに勝って、私たちのチームは一回戦を4対1で突破しました。
この時、何を感謝したかといって、私の出番がもう終わっていたことです。女の子に男が
試合で絞め落とされるのを見たのは初めてでした(その後も経験していません)。
私はもう無茶苦茶に興奮して、股間が膨張しっぱなしでした。全部の試合が終わった
あと、全員で立礼をするのですが、その時でさえ●ンピクになっているのではないかと
マジで心配してしまいました。
男VS女の柔道の試合は結構、会場などで見ましたが、まず8割方は男子の圧勝でした。
しかし、たまに女子が押さえ込みで男をギュッといわせたりする試合もあり、思えばこの
時代の経験が、現在の私の性癖につながっています。
後になって、Sがこの時の試合の感想を私にもらしたところによると、少女の絞めは
ポイントにうまく入っていたらしく、
「すーっと気持ちよくなって、気がついたら負けてた」
とのことでした。
試合の勝ち負けはともかく、私も一度、女の子に落とされてみたい、
私はその時、本気でそう思いました。

(完)


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