「女子と本気勝負!」
Text by 薮平
「格闘1」

私もみなさんと同じように、格闘技の強い女性へのあこがれがありました。
TV等虚構の世界の中で、男を殴り、蹴り、簡単に組み伏せてしまう格闘ヒロインたち。
また、女子プロレスや、柔道、空手などの現実に存在する
女子選手をTVで見ながら私が考えることは、一つでした。
現実に、本気で対戦してみたい。
 
女性と格闘して負かされたらどんなにか屈辱だろう。しかし果たして
本当に女性と格闘して負かされる事が現実にあるのだろうか?
たしかに蹴られれば痛いだろうけど、男の力をもってすれば、
現実的には、女性に負けることはないのではないか?
 
高校2年の時、所属するテニス部に割と仲の良い女子がいて、練習後
に雑談してる時に、強い女の子を知らないかっていう話になり、願ってもない話が出てきました。
「中学の友達に、小学生の頃から空手に打ち込んでいるコがいるよ」
「今も高校の空手部で、活躍しているらしいよ」
私は、夢中でその女の子の話を聞き出しました。
 
名前をY子さんといって、空手の実力は相当なものらしい。
スケバンタイプではなく、どちらかというとまじめなスポーツ少女
だったので、残念ながら、男子と決闘して負かしたような話は聞いてないそうでした。
それでも、ケンカになったら負けるとふんだのか、
男子の不良連中も彼女に対しては、大きな顔ができなかったそうです。
 
私は、とにかく知り合いになりたいと思い、そのテニス部女子に会う
機会をつくるよう、頼みました。Y子さんは、練習と試合で土日も
忙しく、なかなか実現しませんでしたが、2ヶ月位たった日曜日に、
男女のグループで、遊園地に行く機会を得ました。
 
Y子さんは、美人という程ではないですが、格闘技選手とは思えない
優しい顔をしていました。身長は160位でしょうか。
ジーンズにTシャツ姿で、服の上からも引き締まっていて、かつ均整
のとれたすばらしいプロポーションである事がわかります。
私は、瞬時に彼女のファンになりました。
 
彼女の強い部分にひかれる下心を押し隠して、とにかく男女交際と
して好かれるように努力しました。できることならお付き合いしたい。
 
しかし、本心は押さえきれず、気がつくと、男子とケンカしたこと
ある?とか、男子と試合したことある?とか聞いていました。
彼女は笑顔で答えてくれました。
知ってる男子だと、空手の構えをすると、相手が逃げてしまうので、ケンカにならない事。
今の練習相手はいつも男子で、勝ったり負けたりだけど、
一度蹴りが決まりすぎて男子を病院送りにした事がある事。
中学までは、男子、女子が一緒のトーナメントになる事があり、
ある大会の中学の部で、男子を破って優勝した事がある事。
 
私は自分のアソコが勃起しているのに気がつきました。
[素人の男ならまだしも、ちゃんと空手をやっている男が、女の子に
負かされてしまうなんて。そんな事が現実にあるなんて。]
大会というからには、少なくとも十人以上の男が参加している
だろうに。そんな毎日練習している男たちが、全員、よってたかって
この女の子に負かされたのか。この女の子に蹴られて、殴られて敗れさっていったのか。
さぞかし悔しかったろう。さぞかし惨めだったろう。泣きたくなったろう。
きっと決勝戦なんて、相手の中学生男子は、
自分の友人や、もしかしたら自分の両親なんかも含め、たくさんの人が注目する中で、
[まさか女の子に優勝をさらわれるわけにいかない]
[皆が見ている前で女の子に負けるなんて恥ずかしい]
[ああ、なんだ、この女の子強いぞ。まずいぞ。]
なんていう追い込まれた精神状態の中で、自分を見失い、
このY子さんの、パンチ、蹴りを浴びて、崩れ去ったのだろう。
 
その後も、何回か遊びにいく事があり、明るいグループ交際を続けて
いたある日、Y子さんの試合があるというので、自分のクラブ活動を
さぼって応援に行きました。Y子さんは応援をよろこんでくれました。
空手着のY子さんはとても素敵でした。男子との対戦ではないのが
残念でしたが、Y子さんは、早い身のこなし、正確なパンチ、蹴りで、
相手をよせつけず、素人目にも、男にも勝ってしまう事が納得できました。
 
私は、もう完全に彼女のとりこになっていました。
彼女と疎遠になった後も、何年もの間、私自身がY子さんと対決して
負かされる妄想が私の宝物です。彼女の素敵な勇姿。空手部男子をも倒して
しまう速くて強烈な蹴り、パンチが頭の中にフラッシュバックさせつつ。
 そしてこんな妄想の物語に浸るのです。
 
・・・・・・・・・・・
 
[Y子さんと本気で対決してみたい]
[彼女の強さを身を持って体験してみたい]
 
Y子さんを家まで送っていきながら、良い場所を見つけました。
神社の境内が公園のようになっていて、木に取り囲まれていて周りから見えず、
邪魔者は入りそうにありません。
ほど良い街灯があって、私は、その下で話をしようと切り出しました。
 
彼女は白いブラウスに紺色のプリーツスカート。
私は、彼女と本気で対決する状況を作り出すために、彼女を挑発し怒らせました。
 
そして、私はY子さんに襲いかかりました。
 
彼女の体に触れたか触れなかったか、という瞬間に、
彼女の白いふとももが見えたような気がました。
次の瞬間、私の耳が熱くなり、私はバランスを崩しました。
どうやら、彼女のハイキックを側頭部に受けたようでした。
側頭部が割れるように痛く、自然と涙が出てくるのがわかりました。
 
それでも勢いで向かっていく私に、パンチが襲いました。
反射的に顔を手でおおいましたが、その手にまた激痛が走ります。
顔を手でガードする私に、彼女は、足にキック、みぞおちにパンチと打ってきました。
みぞおちのパンチで呼吸が苦しくなり、
私の膝あたりに2度3度と繰り出されるキックをよける事も、ガードする事もできません。
私の左膝の痛みは、もう立っている事もできない程になり、私はがっくりと膝をつきました。
 
私の挑発がよほどうまく効いたらしく、Y子さんは本気で怒っているようです。
私は、もううずくまった状態で、彼女のパンチ、蹴りを浴び続けました。
彼女の履いているローファーが私の脇腹、足に食い込みます。
もう痛さというより、全身がしびれている感じで、もう動くこともできない状況でした。
 
私は、恐怖を覚えました。
[もしかしたら殺されるのでは?女の子に蹴り殺されるなんて?]
対決を計画した事を、後悔しましたが、もうどうにもなりません。
[女の子がこんなに強いなんて。]
[女の子の蹴りがこんなに痛いなんて。]
 
痛さと屈辱感だけが、倒れ落ちた私をつつんでいました。


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